全力映画特別企画第1弾「監督×監督@全力座談会!!!!」

『かぞく』監督:松永大司×『もはや ないもの』監督:三宅伸行×『ボーイ・ミーツ・ガール』監督:山岡大祐×『冬の爆弾』監督:森英人

11月17日(土)よりいよいよ公開される短編オムニバス映画『全力映画』。その第1弾に関わった監督と俳優がその成り立ちから、作品に込めた思いまで率直に語ります。

7月7日に行われた座談会を3回に分けて、ご紹介。
今回は監督4人が「ワークショップ」と「ワークショップ映画」について全力で話します!

司会・構成/那須 千里

「全力映画」は松永監督が中心となって始動したプロジェクトだそうですね。

松永:
まず自分がワークショップ(以下WS)をやるにあたって、一本の映画を完成させて劇場で公開することを、一つのゴールにしたかったんです。その出口としては短編がいいと思いました。ただ、短編一本だけで劇場公開するのは難しいので、山岡監督と森監督、三宅監督にも声をかけて、この 四人のクラスで第一弾がスタートしたんです。人選は完全に僕の個人的な好みですね(笑)。俳優と真面目に接してくれて、さらに今の日本映画界の第一線で活躍している監督たちより次の世代に当たるメンバーで挑戦したいなと思ったんです。
『かぞく』監督:松永大司

山岡監督、森監督、三宅監督はそれまでWSの経験はありましたか?

森:
今回が初めてでした。もともとやる予定もなかったんですけど、松永監督のクラスを見学してみたくて、アシスタントとして参加していたんです。なぜなら当時自分の演出力に限界を感じていたこともありまして……(笑)。「映画は思いだけではできない」ということを痛感していたところだったので、その後で声をかけてもらったときは、自分が成長させてもらうためにもやってみようと思いました。
山岡:
僕も最初は興味がなかったんですけど、松永監督のクラスを見学させてもらったら、すごくよかったんですよね。監督が俳優と真剣に向き合って、俳優もそれに応えようとしていて。その結果として出来上がった短編『かぞく』を観て、こんなふうに作品を作れるんだったら、自分でもやってみたいなと思ったんです。
三宅:
僕も初めてで、他の監督のWSを見たこともほとんどありませんでした。正直、あまりよく思っていなかったんですよ(笑)。僕は俳優経験もないですし、どちらかというと撮影畑から映画を始めたので、いわゆる舞台などで演出というものを学んだ経験もないんです。ただ、だからこそもっときちんと演出を勉強したい気持ちもありました。しかも映画を作るのが目的ということだったので、オーディションを兼ねて俳優と出会う場があって自分も演出を学べるのならば、と思って引き受けたんです。
 日本では撮影現場で監督が俳優ときっちり向き合うこと自体が難しい現実もあるんですよ。予算やスケジュールに余裕のない作品だと、衣装合わせの合間のちょっとした時間でリハーサルをやるしかない場合もあります。今回のWSでいいなと思ったのは、三ヶ月間みっちり俳優とつき合えることで、それを長いリハーサルだと考えると絶好の機会だなと思いました。
『もはや ないもの』監督:三宅伸行

それぞれのWSでは具体的にどんなことをやっていたのでしょうか。

森:
今まで自分がやっていなかったことをいろいろ試してみようかなと思いました。例えば演劇のエチュードの一種で、あらかじめセリフを書いた紙を床に散らばらせておいて、あるタイミングでランダムに拾った紙のセリフを俳優に言ってもらったり。
山岡:
僕は“脚本の読み方”ということを監督と俳優との共通のベースに持ちかったので、それをメインにしました。俳優と監督で脚本の解釈が違うのは当然なので、じゃあどういう読み方をすれば俳優と対話ができるかにポイントを絞ると「脚本に書いてあることをちゃんと読もう」というところに行き着くんです。書いていないことは「もしも」の世界だから、まずは書いてあることをちゃんと読めるようにするところから始めました。ディスカッションというよりは「それはどこに書いてあったの?」とどんどん聞いていく感じです。もし俳優と意見が食い違っても、脚本の記述に戻ってくれば対話が成立する。その関係性を作ることをずっとやっていましたね。
 そのときに使った脚本は僕が自分で書いたものです。だからといって僕の意見=正解になってしまうのは嫌だったので、極力自分からは解釈を言わずに、まず演じてもらってその理由を聞いて……の繰り返しでしたね。
三宅:
僕の場合は“アクティングforカメラ”というか、カメラの前で演じることの意味を俳優に意識してもらいたかったんです。そこで実際にカメラを置いて撮影しながら演じてもらったり、撮影した映像を見てもらったりもしました。いい演技をしていても、カメラが回っているときに余計な瞬きをしただけでそのシーンが台無しになってしまうこともあるので、それを肌で感じてもらいたかったんです。
 その他に毎週一本の映画を観てそれについて話すということもやりましたね。僕がいいなと思うポイントのある映画や、みんながあまり観ていないんじゃないかと思われるタイトルをチョイスしたりしました。『ペパーミント・キャンディ』(99)や『ビフォア・サンセット』(04)など、俳優の演技が映画の一番の原動力になっているような作品をいくつか選びましたね。あとは昔の日本映画ということで今村昌平監督の作品とか。単純に映画を好きになってもらいたいという気持ちもあったんですよ、もっと映画を観て欲しいなと思ったので。

松永監督は?

松永:
俳優としてやっていく上で一番必要なことは何だろうと考えると、自分の感情を外に出すことができるかどうかという一点に尽きると思うんですよ。僕たちが普段生きていて内に溜めておく喜怒哀楽をいかに外に出せるか。外に出すものがない人はそもそも問題外ですし、出すにしても人それぞれのやり方があると思うんですけど、WSではそのきっかけを掴んでもらうことが目標でしたね

実際にWSで映画を作ってみていかがでしたか?

山岡:
WSでは基本的にクラスのメンバーから出演者を選ぶので、普通の映画とは作り方が変わってくるんですよね。だからWSをやることと実際に映画を作ることとは全然違うというのが、やってみて初めてわかったんです。
『ボーイ・ミーツ・ガール』監督:山岡大祐
森:
WS自体は俳優にも監督もメリットがあってよかったと思っています。ただ、WS映画を作るということについては、自分でもまだ答えが見つかっていない部分はありますね。
松永:
だから、WS映画を作ろうとは思っていなかったんですよ。出来た作品に対して「WSで作った」という言い訳をしたくなかったんです。この四人はみんな海外の映画祭に自分の作品を出品したことがあるのでわかると思いますが、海外の観客にとって日本での俳優の知名度は関係ないんですよね。そういう場でも勝負できる純粋な短編として作ろうとしたときに、WSの中だけでキャスティングすることは、演技力だけでなく見た目や年齢の制約も含めて難しいなと思ったんです。『かぞく』は“この人とやりたい”と思った俳優に沿って撮るネタを探したのでキャスティングに悔いはないですが、作品を作る上で俳優が絶対的に大きな存在であることをあらためて実感したからこそ、WSの限界も感じましたね。
三宅:
メリットとデメリットは両方あると思うんですよね。参加したメンバーの中で作るという制約は大前提としてありますけど、その人たちをよく知るために三ヶ月という期間があるわけで。一回脚本を書いて、クラスで試してみて、上手くいかなかったら書き直すこともできる。時間があるのは最大のメリットでしたね。
 『もはや ないもの』では俳優として誰を使いたいかより、役に合いそうな人を優先して選んだかもしれません。他のやり方もあったかもしれないですけど、みんなとやりたかったので。やっぱり三ヶ月も一緒にいると妙な愛着が沸きますよね。最初に松永監督から話を受けて「(映画を作ることを目的に)やりますよ!」と電話を切ったときと三ヶ月後とでは、全然気持ちが変わっているんです(笑)。
森:
僕も最初は「映画をちゃんと作るつもりでやろう!」と始めたんですけど、どんどんみんなに愛着がわいてきちゃって、だんだん映画の割合が小さくなってきたところがあって……頭がグチャグチャになったときもありましたね(笑)。
松永:
結果として、僕のクラスからは作品に出演していない人もいるんですよ。

それもアリですか?

松永:
まあ、今となっては……という感じですけど(笑)。いい映画を作ることと、WSの参加者に満足してもらうことは、必ずしも両立しないんですよね。それよりもとにかくいい作品を作りたいという思いしかない。そのためには限られた予算と時間の中で全員を出している余裕はないんです。ただ、それにもいろいろ葛藤はありますよ。僕が最初にワガママを言った結果、他の監督たちのやり方が変わってきたというか……。
山岡:
いや、でも、僕も全員は出していないですよ(笑)。僕はWSで作る以上はその中でキャスティングを完結させたほうがいいと思ったし、三ヶ月間を一緒にやってきた蓄積があるのでみんなに愛着がありましたし、出来れば全員に何らかの役をやって欲しいとは思っていましたね。もちろん現実的にはムリなんですけど。だから少なくとも出演者はすべてクラスの中から選びました。
 『ボーイ・ミーツ・ガール』の主役のキャスティングが決まったのはWSの最終回だったんですよ。最初にキャスティングしたいなと思った人がいたんですけど、その人は最後まで休みがちだったんですよね。そうするとやっぱりいくら魅力を感じていてもキャスティングしづらいというか……そのうちに他にもいいなと思う人が出てきたりもしますし。そんなとき、毎回出席していたけど決め手に欠けるなと思っていた大和君が、最後の最後ですごい爆発力を見せた。こいつだったら一緒に映画を作れる、懸けられる、という感じが沸いてきたのは、WSならではの経験だったと思いますね。
森:
冬の爆弾』も完成してみると、最初に撮りたいと思っていた人と結果的に出演した人が、結構違ったんです。
松永:
オーディションの場合は一回きりで、二次、三次と進んだとしても、長い時間じっくりと演技を見てもらえる機会はないじゃないですか。だから俳優の側からするとWSは挽回のチャンスが増えますよね。一定期間の中で自分の魅力をきちんと出して努力を示せれば、監督だって普通の人間だから情も移るし、この人だったらこういう役も出来るんじゃないかとアレンジしていくこともできるんです。

役に合う人を選ぶことがキャスティングだとしたら、いわゆる「いい俳優」の定義とは何でしょうか。

三宅:
どんな役もできる「いい俳優」もいれば、限定された役の中で魅力を発揮する「いい俳優」もいると思います。ただ、どんなにいい俳優でも役に合わないことは確実にあります。ある作品でオーディションをしたとき、ルックスも演技もいい女優がいたんですけど、そのときに僕の書いた脚本が島の話だったんですよ。彼女には島の住人としてのリアリティがなかったんですね。
松永:
俳優はそこが大変だなと思いますよね。芝居が上手かどうかよりも、その人となりで持っているものが役に合うかどうかがとても大きいわけで。容姿がよくて演技が上手いからといって役が取れるとは限りませんよね。職業として俳優で生活していくためにはある程度コンスタントにやっていかなければならないわけで、そのためには何が出来るのか、何をもって俳優として生きていくのかというのは、難しい問題だと思います。
山岡:
相手役にちゃんと注意を払える人はいい俳優だなと思いますね。波長を合わせるというと抽象的な言い方になってしまいますけど、相手に集中力を向けられる人は、端から見ていてもやっぱりその人の演技に引き込まれるんです。

映画のWS企画が増えている昨今の世間の動きについてはどう思いますか?

三宅:
意識はしますよね。期間や人数などWSごとにルールの違いはあるでしょうけど、結局は作品の力だと思うんですよ。だからまずこの四人の中で他の三本よりもいい作品を作りたいので……。
一同:
(笑)
三宅:
でもそういう気持ちでないと意味がないですよね。それをもっと広げると他のWSよりもいい映画を作りたいし、人に観てもらって初めて完成するものなので、常に公開を前提に作っているつもりです。
松永:
テーマも人に観てもらうことを考えて選びますよね。どんな状況であれ、作るからには、観客を意識していない映画は絶対に残っていかないと思うんです。
山岡:
一度でも自分の作品を劇場で公開したことがある監督なら、その厳しさみたいなものはわかっていると思います。普通に上映してもまずお客さんは来ないですし、当然クオリティも問われる。その中で公開を念頭に短編を作るにはどうするか? というところからスタートしたWSが「全力映画」だと思うんです。“いわゆる普通の映画ではありませんよ”と前置きをした上で公開するのが、今のWS上映の一般的な形だと思うので、少なくとも「全力映画」ではそういう言い訳をしないつもりで撮りました。
『冬の爆弾』監督:森英人
森:
結局、映画は映画なんですよね。観に来てくれる人にとって作られた事情は関係ないので、よりいいものを作りたいですよね、やっぱり。

【全力座談会第二弾】 出演俳優7名が、俳優側から見た「全力映画」の魅力について全力で語ります!!